カーズ先生はいじわる
「だ、だめです、むりです」
「何故だ」
適当な部屋に押し込みその身体に指を這わせば、いつになく強い力で俺を押し退けようとしてくる。それを無視して顔を近づけてやれば、目尻を真っ赤にして目を逸らしてきた。
「だって、その、だれか、きちゃう……」
「鍵があるだろう」
「こっ、声は聞こえちゃいますし、」
「お前が抑えればいい話だ」
「絶対無理ですよぉ……!」
泣き言を言いつつふるふると首を振り続ける莉乃に、胸の奥の黒い感情が首をもたげた。嫌がるならばそれはそれで愉しいというものだろう。そう思えば自然と口の端が吊り上がる。
「言いたいことはそれで全部か?」
「っ待ってくださ――んっ」
胸に添えられた両腕は今や弱々しく、もはやまるで意味を成していない。容易く流される愚かなお前に、もう一つ追い討ちをかけてやろう。存分に抵抗すればいい。
「そういえば、鍵はかけたかなァ?」
「なっ……!!」
「貴様の言うとおり誰か入ってくるかもしれんな」
まあ、やめはしないが。そう続けながら暴れようとする莉乃を押さえつけて口づける。じわりと涙が滲むのも舐め取ってやる。
「せんせ、やだ、せめて鍵だけでも、お願いだからぁ……!」
何度懇願されようと、触れる手や唇を休めることはない。鍵ならばしっかりと閉めてきているというのに。この俺に抜かりなどあるものか。本当にこいつはすぐに真に受ける。
「誰も通りかからないことを祈るんだな」
さて、その抵抗はいつまで続くかな?